
親知らずの抜歯は、多くの方が経験する口腔外科処置の一つです。抜歯後には、痛みや腫れ、そして食事がどのようにできるのかといった不安がつきものです。特に、普段の食事が摂れないことへの心配や、抜歯後の回復を早めるためにはどのような食事を選べば良いのか悩む方も少なくありません。
この記事では、そのような抜歯後の食事に関する不安を解消し、痛みを最小限に抑えながら早期回復を目指すための具体的なガイドラインを提供いたします。抜歯後の経過日数に応じた適切な食事メニューや、絶対に避けるべき食べ物・飲み物、さらには食事以外のセルフケアのポイントまで、包括的に解説していきます。この記事を読み終える頃には、抜歯後の生活を安心して乗り切るための知識が身についていることでしょう。
親知らず抜歯後の食事はいつから?基本のタイミング
親知らずの抜歯後、いつから食事を始めて良いのかは、多くの方が抱く疑問の一つです。基本的には、抜歯手術で使用した局所麻酔の効果が完全に切れてから食事を開始するようにしてください。麻酔が効いている間は、お口の中の感覚が鈍くなっているため、誤って頬の内側や唇、舌を噛んでしまっても気づきにくく、新たな傷を作ってしまうリスクがあるためです。
麻酔が切れるまでの時間は個人差がありますが、一般的には2〜3時間程度が目安とされています。ご自身の唇や舌の感覚が完全に普段通りに戻ったことを確認してから、ゆっくりと食事を始めるようにしましょう。慌てて食事をすると、思わぬトラブルにつながる可能性もありますので、焦らず、体の感覚を確かめることが大切です。
【時期別】親知らず抜歯後におすすめの食事メニュー
親知らず抜歯後の回復プロセスは、患者様一人ひとりの状態によって異なりますが、食事内容を傷口の状態に合わせて段階的に調整していくことが、早期回復と不快感の軽減につながります。このセクションでは、抜歯直後の痛みや腫れがピークとなる時期、回復期にあたる抜歯後4日目以降、そして通常の食事に戻していく抜歯後1週間以降というように、時期を区切った食事計画の重要性について解説します。適切な時期に適切な食事を選ぶことで、傷口への刺激を最小限に抑え、感染症などのトラブルを避けることができるでしょう。
続く項目では、それぞれの時期に合わせた具体的な食事メニューや、食事をする上での注意点をご紹介します。この情報を参考にしていただけることで、親知らず抜歯後の食生活を安心して、かつ無理なく送るためのヒントを得ていただけると幸いです。
抜歯当日~3日目:痛みと腫れのピーク時の食事
親知らず抜歯後、特に注意が必要なのが、抜歯当日を含めた術後3日間です。この期間は、抜歯による痛みや腫れが最も顕著に現れる時期で、特に抜歯後48時間(2日目)には腫れがピークに達することが知られています。この時期は、口を大きく開けることや、食べ物をしっかりと噛むことが困難になるため、食事を摂ること自体が大きな負担になることも少なくありません。
この期間の食事の主な目的は、抜歯した傷口への刺激を最小限に抑えつつ、体力の消耗を防ぐために必要な栄養を補給することです。無理なく摂取でき、傷口に負担をかけないような、柔らかく、刺激の少ない食事を選ぶことが非常に重要になります。次のセクションでは、この期間におすすめの具体的な食べ物や飲み物について詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
おすすめの食べ物・飲み物
抜歯当日~3日目は、痛みや腫れが強く、食事を摂るのが辛い時期です。この期間におすすめなのは、ほとんど噛む必要がなく、喉越しが良く、常温か冷たい食事です。具体的には、おかゆや雑炊、ポタージュスープ、ヨーグルト、ゼリー、豆腐などが挙げられます。これらは傷口を刺激せず、スムーズに飲み込めるため、無理なく栄養を摂取できます。
栄養バランスも考慮し、タンパク質が補給できる卵豆腐や茶碗蒸し、柔らかく煮込んだ鶏肉を細かくほぐしたものなどを加えるのも良いでしょう。また、ビタミンを補給するために、皮や種を取り除いたスムージーや、野菜を柔らかく煮込んだポタージュなどもおすすめです。これらの食事は、傷口への負担を最小限に抑えながら、体の回復に必要なエネルギーと栄養素を効率的に供給してくれます。
冷たいゼリーやヨーグルトは、口腔内を優しく冷やす効果も期待でき、不快感を和らげる助けにもなります。ただし、あまりにも冷たすぎるものは刺激になる場合もあるため、ご自身の体調に合わせて調整してください。
食事の際の注意点
痛みと腫れのピーク時である抜歯当日~3日目の食事では、いくつかの重要な注意点があります。まず、最も大切なのは「抜歯した歯とは反対側の歯で噛む」ことです。これは、抜歯部の傷口に食べ物が直接触れるのを防ぎ、治癒を保護している血餅(血の塊)が剥がれてしまうのを避けるためです。血餅が剥がれると、ドライソケットという激しい痛みを伴う合併症のリスクが高まるため、細心の注意を払ってください。
また、食べ物や飲み物の温度にも気を配りましょう。熱すぎるものは血行を促進し、出血や痛みを悪化させる可能性があります。必ず冷ますか、常温以下のものを摂るようにしてください。食後には、食べかすが傷口に入り込むのを防ぐため、優しく口をゆすぐことが推奨されます。ただし、強いうがいは血餅を剥がす原因となるため、口に水を含んで、顔を傾けるようにしてそっと吐き出す程度に留めてください。
抜歯後4日目~1週間:少しずつ普段の食事へ
抜歯後4日目から1週間にかけては、多くの場合、痛みや腫れのピークが過ぎ、少しずつ口が動かしやすくなる回復期に入ります。この時期になると、抜歯直後の流動食やペースト状の食事から、徐々に形のあるものへと移行していくことができます。しかし、傷口はまだ完全に治癒しているわけではないため、油断は禁物です。
食事の内容を段階的に戻していくことで、傷口への負担を最小限に抑えながら、無理なく通常の食生活へと移行できます。この期間も、無理をせず、ご自身の回復状況に合わせて慎重に食事を進めることが大切です。次に、この時期に食べられるようになる具体的な食品の例をご紹介しますので、参考にしてください。
食べられるようになるもの
抜歯後4日目から1週間にかけては、少しずつ食事の選択肢を広げていきましょう。この時期には、おかゆから水分を少なめにした軟らかく炊いたご飯へ、スープから具材を細かく刻んで煮込んだシチューやカレーなど、流動食よりもしっかりと形があるものにステップアップできます。ただし、具材は十分に柔らかく煮込み、少量ずつゆっくりと食べるように心がけてください。
その他にも、軟らかいうどんやマッシュポテト、豆腐ハンバーグ、スクランブルエッグなども良い選択肢です。野菜は、葉物野菜を柔らかく煮込んだおひたしや、カボチャやジャガイモなどの根菜を潰したものなら摂取しやすいでしょう。果物では、バナナやりんごのすりおろしなどがおすすめです。これらは比較的噛む力が少なくても食べられ、栄養も補給できます。
ご自身の回復状況に合わせて、無理なく食事の幅を広げていくことが重要です。少しでも痛みや違和感を感じたら、無理せず前の段階の食事に戻すなど、慎重に対応してください。
引き続き気をつけること
回復期である抜歯後4日目から1週間の間も、引き続き食事には注意が必要です。この時期は、完全に普段通りの食事に戻すにはまだ早い段階です。特に、硬い食べ物、繊維質の多い野菜、香辛料の強い料理は、傷口を刺激する可能性が高いため、引き続き避けるようにしましょう。例えば、おせんべいやナッツ類、フランスパンのような硬いパン、揚げ物の衣などは、傷口に物理的な刺激を与えたり、剥がれた血餅に引っかかったりするリスクがあります。
また、ごぼうやセロリのような繊維質の多い野菜は、傷口に入り込みやすく、取り除きにくいだけでなく、咀嚼によって傷口に負担をかけることがあります。唐辛子などの香辛料を多く使った辛い料理は、傷口を化学的に刺激し、痛みや炎症を悪化させる可能性があるので控えてください。引き続き、抜歯した側で噛むことは避け、食事中に少しでも違和感や痛みを感じた場合は、無理をせず、より軟らかい食事に戻すなど、慎重な対応を心がけることが大切です。
抜歯後1週間以降:通常の食事に戻す目安
抜歯後1週間が経過すると、ほとんどの場合で傷口の表面が新しい粘膜で覆われ、大きく回復している状態です。この時期になると、食事の際の不快感がかなり軽減され、徐々に通常の食事に戻しても良いと考えられます。完全に通常の食事に戻すための目安として、いくつか具体的なチェックポイントがあります。
まず、口を大きく開けても痛みを感じないこと、そして抜歯した側の歯茎に食べ物が触れても強い痛みや違和感がないことが挙げられます。また、目に見える腫れがほとんど引いていることも重要な目安です。これらの状態が確認できれば、段階的に硬さや刺激のある食事を試していくことができるでしょう。ただし、回復の度合いには個人差がありますので、最終的にはご自身の感覚を大切にしてください。少しでも不安や痛みを感じる場合は、無理をせず、軟らかい食事を続けるようにしましょう。
コンビニでも買える!抜歯後におすすめの食品リスト
親知らず抜歯後の食事は、痛みや腫れがある中でどのように栄養を摂るかが課題となります。自宅で調理する時間がない場合や、一人暮らしで食事の準備が大変な場合、コンビニエンスストアは非常に心強い存在となるでしょう。コンビニで手軽に購入できる食品を賢く活用することで、抜歯後のつらい時期も栄養不足になることなく乗り切ることができます。
このセクションでは、抜歯後の時期に合わせて取り入れやすい、コンビニで買えるおすすめの食品をご紹介します。大きく分けて、食事のメインとなる主食系と、栄養補助や間食に便利なものに分けてご紹介しますので、ご自身の状況に合わせて最適なものを見つける参考にしてください。
主食になるもの(おかゆ、茶碗蒸しなど)
抜歯後の主食として特におすすめなのは、消化しやすく、傷口に負担をかけない柔らかい食品です。コンビニでは、レトルトのおかゆや雑炊が豊富に揃っています。これらは電子レンジで温めるだけで簡単に準備でき、噛む力がほとんど必要ないため、抜歯直後から積極的に活用できます。具材が細かく刻まれているものや、鶏卵、鮭フレークなどタンパク質が補給できるものを選ぶと、栄養バランスも良くなります。
また、パックに入った茶碗蒸しや、冷奴のような絹ごし豆腐、卵豆腐も主食の代わりや、食事のもう一品として非常に便利です。これらも柔らかく、冷たいままでも食べられるため、熱いものが苦手な時期にも適しています。商品を選ぶ際には、具材に硬いもの(例えば、茶碗蒸しの中に入っている銀杏など)が含まれていないか、パッケージの表示をよく確認するようにしましょう。
栄養補助や間食(ゼリー、ヨーグルト、スープなど)
食欲がない時や、食事だけでは栄養が不足しがちな時期には、手軽に栄養を補給できるコンビニの間食や栄養補助食品が役立ちます。飲むタイプのゼリー飲料(例:ウィダーインゼリー)は、食事を摂るのがつらい時でも水分とエネルギーを同時に補給できるため非常に有効です。カップヨーグルトも口当たりが良く、冷たくて傷口を刺激しにくいのでおすすめです。ただし、フルーツの果肉やナタデココなど、硬いものが入っていないプレーンタイプを選ぶようにしましょう。
温かいものが欲しくなった時には、コーンポタージュやじゃがいものポタージュのようなカップスープも良い選択肢です。具材が溶け込んでいて、噛む必要がないため、抜歯後の口にも優しいです。さらに、プリンやババロアといったデザートも、柔らかく喉越しが良いので、気分転換や栄養補給になります。これらの食品を選ぶ際も、できるだけ滑らかな舌触りのものを選び、硬いものが含まれていないかを確認することが大切です。
回復を妨げる!抜歯後に避けるべき食事と飲み物
親知らず抜歯後の回復をスムーズに進めるためには、食事の選択が非常に重要です。適切な食事は傷口の治癒を促しますが、誤った食事は痛みを増強させたり、ドライソケットと呼ばれる合併症を引き起こしたりするリスクがあります。これからご説明する「傷口を刺激するもの」「血行を促進しすぎるもの」「ドライソケットの原因になる行為」の3つのポイントを理解し、避けるべき飲食物や行動を知っておくことで、トラブルなく回復を早めることができます。
これらの注意点を守ることは、抜歯後の期間を快適に過ごし、安全に回復するために不可欠です。ご自身の状態に合わせて無理のない範囲で実践していただくことが、健やかな口腔環境を取り戻す第一歩となります。
傷口を刺激するもの(硬い・辛い・熱い)
抜歯後の傷口は非常にデリケートな状態です。回復を妨げないためにも、物理的・化学的刺激を与える飲食物は避けるようにしましょう。特に、硬いもの、辛いもの、熱いものは、傷口に直接影響を与え、痛みや治癒の遅れを招く可能性があります。
まず、「硬いもの」は、おせんべいやフランスパン、揚げ物の衣などが挙げられます。これらを噛むことで、抜歯窩にできた血餅(血液の塊で、傷口を保護する役割があります)が物理的に剥がれてしまうリスクがあります。血餅が剥がれると、ドライソケットという激しい痛みを伴う合併症を引き起こす可能性がありますので注意が必要です。次に、「辛いもの」は、香辛料を多く使った料理が代表的です。唐辛子などの刺激物が傷口に触れると、強い痛みや炎症を引き起こし、治癒を遅らせることがあります。
さらに、「熱いもの」も避けるべきです。熱い飲食物は血管を拡張させ、血行を促進するため、抜歯後の再出血の原因となったり、腫れや痛みを増強させたりする可能性があります。食事を摂る際は、必ず冷ますか、常温以下のものを選ぶようにしましょう。
血行を促進しすぎるもの(アルコール)
親知らず抜歯後は、アルコールの摂取を控えることが非常に重要です。アルコールには血管を拡張させ、全身の血行を促進する作用があります。この作用により、抜歯した傷口からの再出血を誘発したり、すでに起こっている腫れや痛みをさらに増強させてしまうリスクがあるのです。
抜歯後の安静と治癒のためには、少なくとも抜歯後2~3日間は禁酒することが強く推奨されます。また、歯科医院で処方された抗生物質や鎮痛剤を服用している場合、アルコールと併用すると薬の効果が弱まったり、逆に副作用が強く出たりする可能性もあります。安全かつスムーズな回復のためにも、この期間はアルコールの摂取は避けるようにしてください。
ドライソケットの原因になる行為(ストローの使用)
親知らず抜歯後の合併症の中でも特に注意が必要なのが「ドライソケット」です。これは、抜歯した穴を保護する役割を持つ血餅(けっぺい)が剥がれてしまい、歯槽骨が口の中に露出することで激しい痛みを引き起こす状態を指します。このドライソケットを予防するために、絶対に避けるべき行為の一つが「ストローの使用」です。
ストローで飲み物を吸い込む行為は、口の中に強い陰圧(吸う力)を生み出します。この陰圧が、抜歯窩にしっかりと定着しかけている血餅を引っ張り上げ、剥がしてしまう原因となるのです。血餅が剥がれると、骨が露出して細菌感染のリスクが高まり、激しい痛みが数週間にわたって続くこともあります。同様に、麺類を強くすする行為も口の中に陰圧を生じさせるため、控えるべきです。
飲食物を口に運ぶ際は、コップからゆっくりと飲むか、スプーンなどを使うようにしましょう。ドライソケットは一度発症すると治療が長引くこともあるため、日々のちょっとした注意が、安全な回復には不可欠です。
食事以外も重要!回復を早めるための5つのポイント
親知らず抜歯後の順調な回復は、食事管理だけではなく、日常生活におけるいくつかの注意点を守ることが同じくらい重要です。これからご紹介する「薬の服用」「うがい」「歯磨き」「生活習慣」「傷口の扱い」という5つのポイントを実践することで、痛みや腫れを最小限に抑え、感染症などのトラブルを防ぐことができます。これらのケアをしっかりと行うことが、不安な抜歯後の期間を乗り切るための鍵となります。
処方された薬を正しく服用する
抜歯後に歯科医院で処方される薬は、皆さんの回復を助けるために非常に重要な役割を持っています。主に処方されるのは、痛みを和らげる「鎮痛剤」と、細菌感染を防ぐための「抗生物質」です。
鎮痛剤は、痛みがピークに達する前に服用するのが効果的です。麻酔が切れ始めるタイミングを見計らって服用することで、痛みをコントロールしやすくなります。抗生物質は、たとえ途中で痛みが引いたとしても、処方された分は必ず最後まで飲み切ることが大切です。自己判断で服用を中止したり、量を変更したりすると、感染症が再燃したり、薬が効きにくくなったりするリスクがありますので、必ず指示通りに服用してください。
強いうがいを避ける
抜歯後のうがいは、傷口の回復に大きく影響するため、正しい方法で行うことが非常に重要です。抜歯当日は、基本的にうがいは控えましょう。翌日からは、うがいをしても問題ありませんが、特に「強いうがい」はドライソケットという合併症の大きな原因となりますので、絶対に避けてください。
正しい方法としては、水を口に含んで顔を傾けるようにして優しくゆすぎ、そっと吐き出すようにしましょう。ブクブクと強くうがいをしたり、勢いよく吐き出したりすると、抜歯窩にできた血餅(血の塊)が剥がれてしまう可能性があります。市販の洗口液を使用する場合は、アルコール成分が含まれていない、刺激の少ないタイプを選ぶようにしてください。
抜歯当日の歯磨きは慎重に
抜歯後の歯磨きは、お口の中を清潔に保つために必要ですが、傷口を刺激しないように細心の注意が必要です。抜歯当日は、抜歯した箇所の周辺は磨かず、それ以外の健康な歯は通常通り磨いてください。傷口に歯ブラシが当たらないように、ゆっくりと優しく磨くことが大切です。
抜歯翌日以降は、毛先の軟らかい歯ブラシを使い、抜歯部位の近くも少しずつ慎重に磨き始めましょう。ただし、傷口そのものを直接磨くことは避けてください。約1週間後、傷口がしっかりと安定し、痛みや腫れが引いてきたら、徐々に通常の歯磨きに戻していくことができます。無理せず、お口の状態に合わせて段階的に慣らしていくことが大切です。
激しい運動・長風呂・喫煙は控える
抜歯後の回復期には、いくつかの生活習慣を控えることが、順調な治癒のために非常に重要です。激しい運動や長風呂は、血行を促進するため、抜歯した傷口からの再出血や腫れの原因となる可能性があります。そのため、少なくとも抜歯後2~3日は、激しい運動や長時間の入浴は避け、シャワー程度で済ませるようにしましょう。
喫煙は、抜歯後の治癒を著しく遅らせる大きな要因です。タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる作用があり、傷口への血流が悪くなることで回復が妨げられてしまいます。さらに、タバコを吸う行為自体が口の中に陰圧を生み出し、ドライソケットの原因にもなりかねません。抜歯後、最低でも2~3日は禁煙することが強く推奨されます。回復を早め、合併症のリスクを減らすためにも、できる限り喫煙は控えましょう。
傷口を舌や指で触らない
抜歯後の傷口は、つい気になって舌で触ったり、指で確認したりしたくなるかもしれません。しかし、この行為は、抜歯後の回復を妨げる原因となりますので、意識的に控えるようにしてください。
指や舌には多くの細菌が付着しています。これらが傷口に触れることで、細菌感染を引き起こすリスクが高まります。また、デリケートな血餅を傷つけたり、剥がしてしまったりする可能性があり、これがドライソケットの原因となったり、治癒を遅らせたりすることにつながります。傷口が治癒する過程を妨げないためにも、可能な限り触らないように意識することが大切です。
【トラブル対処法】こんな症状は歯科医院へ相談を
親知らずの抜歯後には、個人差はありますが、ある程度の痛みや腫れ、そして唾液に血が混じる程度の少量の出血が見られることは、決して珍しいことではありません。これらは体が傷を治そうとする正常な反応として起こるものですので、過度に心配する必要はありません。しかし、その症状が「通常の範囲を超えている」と感じられる場合や、「時間が経っても改善するどころか、むしろ悪化している」と感じられる場合は、何らかのトラブルが発生しているサインかもしれません。
これから詳しくご説明する具体的な症状のいくつかを知っておくことは、万が一の際に早期に問題を特定し、適切な対処へと繋げるために非常に重要です。トラブルを放置してしまうと、重篤な状態へと進行してしまうリスクもありますので、ご自身の体に異変を感じた際には、迷わず抜歯を受けた歯科医院へ相談するようにしてください。
我慢できないほどの強い痛みが続く(ドライソケットの可能性)
抜歯後に起こり得るトラブルの中でも、特に注意が必要なのが「ドライソケット」です。これは抜歯窩(抜歯した穴)を保護するはずの血餅(血の塊)が、なんらかの原因で剥がれてしまい、骨が露出してしまうことで激しい痛みを伴う状態を指します。ドライソケットを疑うべき症状としては、抜歯後2~4日経ってから、処方された鎮痛剤を服用しても全く効果がない、あるいは痛みがぶり返してさらに強くなるといった特徴が挙げられます。
痛みの範囲も特徴的で、抜歯した箇所だけでなく、耳や頭の奥の方まで響くような、広範囲にわたる強い痛みが続くことがあります。また、抜歯した穴から不快な臭いがするといった症状が見られることもあります。これらの症状は、単なる治癒の遅れとは異なり、専門的な処置を必要としますので、自己判断で我慢し続けず、速やかに抜歯を受けた歯科医院へ連絡し、相談するようにしてください。
出血が止まらない
抜歯後の出血については、多くの方が不安に感じられることの一つでしょう。抜歯後1~2日間、唾液に血が混じってピンク色になったり、うがいをした際に少量の血が確認されたりする程度のじわじわとした出血は、ほとんどの場合、正常な治癒過程の一部であり、心配する必要はありません。これは、傷口からの滲出液や、血餅が徐々に安定していく過程で起こる自然な現象です。
しかし、「鮮やかな赤い血がだらだらと流れ続け、なかなか止まらない」「口の中に絶えず血が溜まり、すぐにいっぱいになってしまう」といった状態が見られる場合は、異常な出血の可能性があります。このような場合は、まず清潔なガーゼや、小さく丸めたティッシュなどを抜歯部位に置き、20~30分間しっかりと噛んで圧迫止血を試みてください。それでも出血が収まらない、あるいは悪化するようでしたら、速やかに抜歯を受けた歯科医院へ連絡し、指示を仰ぐようにしてください。
腫れや発熱が悪化する(感染の可能性)
抜歯後の腫れは、特に親知らずの抜歯でよく見られる症状であり、通常は抜歯後2~3日目をピークに、その後は徐々に引いていくのが一般的です。もし、この一般的な経過とは異なり、「3日目を過ぎても腫れが引かない、あるいはむしろ以前より腫れが大きくなっている」「一度引いた腫れや痛みが再び強くなってきた」といった症状が見られた場合は、細菌感染の可能性を疑う必要があります。
さらに、38度以上の発熱がある場合や、傷口から膿のようなものが出ているのが確認された場合は、感染が進行している兆候である可能性が高いです。細菌感染は自然に治ることはほとんどなく、放置すると炎症が広がり、さらに重篤な状態に陥るリスクもあります。これらのサインに気づいた際には、ためらわずに、抜歯を受けた歯科医院に直ちに連絡し、適切な診断と処置を受けるようにしてください。
まとめ:適切な食事とケアで、親知らず抜歯後を乗り切ろう
親知らずの抜歯後は、痛みや腫れ、そして食事に対する不安など、心身ともに負担がかかる時期です。しかし、この期間を安全かつ快適に乗り切るためには、「時期に応じた適切な食事選択」と「食事以外の丁寧なセルフケア」という二つの柱が非常に重要になります。
抜歯直後の痛みや腫れがピークの時期には、おかゆやゼリーといった柔らかく刺激の少ない食事で栄養を補給し、傷口への負担を最小限に抑えることが回復の鍵です。回復が進むにつれて少しずつ食事の幅を広げていく段階的なアプローチが、無理なく体を慣らし、安定した回復を促します。また、硬いものや辛いもの、熱すぎるもの、そして血行を促進するアルコールは避けるべきです。
さらに、うがいや歯磨きの方法、日常生活での過ごし方にも注意が必要です。特に強いうがいやストローの使用は、血餅が剥がれることによって激しい痛みを伴うドライソケットを引き起こすリスクがあるため、絶対に避けてください。処方された薬を正しく服用し、激しい運動や喫煙を控えることも、回復を早めるためには不可欠です。これらのポイントを実践することで、不安な抜歯後の期間をより安全かつ快適に過ごし、早期回復へと繋げることができるでしょう。
少しでも参考になれば幸いです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者
東北大学歯学部卒業後、千葉国際インプラントセンターに勤務、
2015年しらかわファミリー歯科開業、2021年川口サンデー歯科・矯正歯科開業
【略歴】
・東北大学歯学部 卒業・千葉国際インプラントセンター
・しらかわファミリー歯科開業
・川口サンデー歯科・矯正歯科開業
・浦和サンデー歯科・矯正歯科開業
川口市イオンモール川口3階の歯医者・矯正歯科
川口サンデー歯科・矯正歯科
住所:埼玉県川口市安行領根岸 3180 イオンモール川口3階
TEL:048-287-8010